[色者(しきしゃ)のぼやき] 第38回

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「第50回 四国合唱コンクール」

日時:2010年8月29日(日)
場所:松山総合コミュニティセンター キャメリアホール(愛媛県松山市)

2007年、東京での全日本合唱コンクールを境目に少しコンクールから距離をおいた活動を「響」は続けてきた。軽井沢合唱フェスティバル、バッカスフェスタ、三田ハモらっせ・・・全国のいろんなイベントや、徳島県内での定期演奏会やジョイントコンサートなど、それはそれは合唱することの楽しさや幸せを存分に味わった。

しかし自分にとっては「自分たちが合唱をする楽しさ」が、必ずしも「聴いてくれる人を感動させる」ということに繋がらない・・・という課題が常に頭にあった。

・一体どうすれば自分たちの思いが客席に伝わるのか?
・というより、自分たちは何を感じて歌っているのか?
・そもそも、自分たちは何のために合唱をしているのか?

演奏会でたくさんの曲を一気に歌って、そのすべてに魂を注入できるほど「響」のレベルは高くない。1曲でも2曲でもいいから、自分の思いを出し切って客席に何か感じて帰ってもらいたい!このおもいが「やはりもう一度、コンクールの舞台に立とう!」という気持ちを強くした。

3年ぶりのコンクールは、前途多難だった。例年以上に集まらないメンバー・・・やはり“コンクール離れ”している団員が少なからずいるのか?自分が進めている道は誤っているのか?・・・と、何度も立ち止まることがあった。

しかしそんな自分を救ってくれたのは、図らずも今回取り上げた自由曲「くちびるに歌を」であった。初めてこの曲をきいたのはもう1年半ほど前になる。ドイツ語と日本語を交互に歌い上げ、その先に行き着く思いが曲の盛り上がりとともに一体となる・・・男声合唱でなければ歌いきれないようなメッセージ性の強いこの曲が大好きだった。「歌いたい曲を歌って、メッセージと思いを客席に届ける!」これが今回「響」のコンクールでの目標であった。

この「くちびるに歌を」の練習を始めて、いろんな出来事があった。病気療養中であった父が亡くなり、自分を励ます意味でこの歌に傾注した。しかしその後ピアニストのお父様、団員のお父様が相次いで亡くなられ・・・もう悲しみを自分 の内面だけに押さえきれなくなった。また仕事や学業に忙殺されている者、家庭に悩みを抱える者、いろんな試練に立たされている団員が少なくない。それでも自分たちが合唱をやっているのはなぜか?・・・そんな答えを見つけるべく、本 番に臨んだつもりであった。

課題曲は「まっさかさまなまさかのうた」・・・トップテナーの切り出しからはじまる奇怪な旋律は、“言葉あそび”をする余裕もないぐらいハーモニーを合わせるのが難しい。しかしもともとの音源も聴いたことがない自分だったが、歌えば歌うほど、なにかどんどんこの曲の魅力に取り憑かれていったような気持ちだった。本来オトコがもっている“憂い”や“はかなさ”を出そうと演奏したつもりだった。

自由曲に関しては、うかつにも最初のピアノソロの部分で泣き出してしまった。理由ははっきりしていた。「ひょっとするとこの曲をみんなで歌うのは最後かもしれない」と思ったからである。結局、最後まで泣いたまんまだった・・・演奏がどんなものであったのかも、正直わからなかった。あとで団員にきいても「歌っていて上手いのか下手なのかよくわからなかった」と。ただ「自分の力を出し切ったというより、なにかの力が働いて自分からなにかが“出て行った”という不思議な感覚だった」という団員もいた・・・自分もその感覚に似ていたと思う。

演奏後も涙が止まらず、いろんな人に気を使わせてしまった。演奏を失敗して泣いているのではないと思ってくれてたようだから・・・まあいいか♪

今回のライバルは“四国男声合唱界の雄”であるグリークラブ香川。長年、四国において中心的な役割を担い、全四国男声合唱フェスティバルの先導役として、今なおその存在感は群を抜いている。あとから船出した「響」は常に彼らの背中を追ってきた。順番の都合で演奏は聴けなかったが、重厚なハーモニーとめりはりのきいたリズムで会場を魅了したようである。彼らの存在なくしては、今の「響」もなかったであろうことは、疑いない。

審査結果は「響」「グリークラブ香川」ともに金賞だった。わずかの差で「響」が全国に進むことになったが、とりわけ大きな差はなかったようだ・・・これは予想していた通りだった。

そんな中、二度目の全日本合唱連盟理事長賞を「響」として授与されたのは驚いた。ホントに自分ではどんな演奏だったか記憶になかったから。。。情けない指揮者で本当に申し訳ないと思う。しかし“なにかが自分から出て行った”という感覚は、ひょっとしたら客席まで届いた何かがあったのかな・・・と、目標としていた課題にすこし手が届いたようで嬉しかった。

全国大会では、四国のみんなのぶんまでがんばってこようと思う。全国大会での「くちびるに歌を」・・・最後まで歌いきりたい。

審査員先生方からいただいた講評は下記のとおり。

【浅井敬壹先生】 課題曲すばらしい。トップff高音、パートひとつに願います。自由曲、見事!

【松川暢男先生】
久しぶりにいい男声を聞くことができました。ありがとうございます。さらに内声の充実を図られ、存在感ある合唱を多くの人々に届けてください。自由曲、45よりの下行lineのさらなる充実を楽しみにしています。85のHabの方向は少し惜 しい。96のT1のLippenのLiは憧れと信念のゆとりのヒビキがほしい。124の「ち」はニュアンスを、135もむずかしいですね。大いに期待しています。

【上月明先生】
男声合唱らしいすがすがしいハーモニーがひびきわたりました。パートソロの部分は別として、コーラス時の低声部のことばがややききとりにくかったのが残念です。ていねいなことばづくりは、意図は十分伝わってきました。

【鈴木奈香子先生】
谷川の詩、ことばあそびか?もっと遊べるか?よくことばは届きました、ラストのコード!自由曲、LiedのL、LippenのL、135うたをの「を」つかれるな!熱演ですぅ。

【清原浩斗先生】
カッコイイ男声コーラスですね。それぞれいい声です。ゆたかな音楽三昧。独→日本語、感動しました。48Brよりしっかりほしいです。子音のあつかいも見事です。スケールの大きな音楽!!スゴイ!うたをの「を」のアクセント、これがよ りあってもいいですね。うまい。

全国大会では、四国のみんなのぶんまでがんばってこようと思う。全国大会での「くちびるに歌を」・・・最後まで歌いきりたい。

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−2010年9月16日更新−
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