[色者(しきしゃ)のぼやき] 第34回

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全四国男声合唱フェスティバル2009

日時:2009年2月22日(日)
場所:徳島市文化センター

<前日準備&響単独練習> 仕事の都合で、色者は午後6時半より合流した。みんなは午後2時から準備にとりかかり、午後4時ごろから「阿波」の練習が延々と続いたもよう・・・僕がホールに到着した時点では、顔も声も少々お疲れモード。単独ステージを指揮するK氏も「いける、いける、いけると信じる!」と、少し投げやり気味?あしたは響がトップバッターで、冷え切ったホールを最初に鳴らさないといけないのに・・・とかいいながら、前日入りの大澤先生を囲んで夕食会。あした本番なのにあまり合唱に関係ない話で盛り上がっている。僕は出来上がったパンフレットに目を通し、各合唱団のコメントを読んでいると、ほとんどの団が徳島で今回初めての舞台を踏むらしく、かなりの期待を抱いていることが伝わってくる・・・なんだか急に緊張してきて、なかなかお酒がすすまない。最後は「どしたん?全然飲んでないやん!」とツっこまれる始末。

<準備&リハーサル> 2月22日午前8時30分、今回全四国男声フェスが初めて徳島で開催されるに際しホスト役となった「響」のメンバーはぞくぞくと楽屋口に集まり始める。午前9時にならないと入り口は開かないのだが、そこへグリークラブ香川を乗せたバスが到着。ご家族や応援団も含めてかなりの人数で、さすがにこの演奏会に対する気合いがこの団は半端でないことが伺われる。入り口で談笑しながらも、午前9時をすぎ、楽屋へ直行!受付の準備や掲示類の設置ならびに各団の誘導やらで午前中はあわただしく過ごす。15分ずつの各合唱団リハーサルにつづき、合同演奏のリハーサルが1時間行われた。“正直1時間もいらないかなぁ〜”と思っていたが、あれこれ指導しているうちにあっという間に1時間がすぎた・・・“これで本番、ほんまに大丈夫かな?”と、少し不安を残す。自分はこの時点でまだ楽譜をステージに持ち込むかどうか迷っていた。

<本番>
まずは本日のプログラム♪
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  1. 徳島男声合唱団「響」(指揮:香西 大孝)
      → 合唱による風土記「阿波」(三木 稔 作曲)

  2. TURKEY'S CULB(指揮:中内 恵一)
      → 男声合唱組曲「一度でも多く感動の涙を流したい」(瀬戸口 重利 作曲)

  3. えひめグリークラブ(指揮:米山 篤信)
    → 男声合唱組曲「中原中也の詩から」(多田 武彦 作曲)

  4. 男声合唱団「我夢」(指揮:藤田 憲正)
    → 男声合唱組曲「中勘助の詩から」より(多田 武彦 作曲)

  5. 丸亀男声合唱団コールメル(指揮:川崎 篤子 ピアノ:久保川 亜紀)
    → 男声合唱組曲「心の四季」より(高田 三郎 作曲)

  6. グリークラブ香川(指揮:高橋 圭二 ピアノ:大山 まゆみ)
    → 男声合唱曲集「ジブリの森」より(遠藤 謙二 編曲)

  7. 男声合唱団 ARCHER(指揮:北田 尚 ピアノ:伊吹 元子)
    → 男声合唱とピアノのための「新しい歌」より(信長 貴富 作曲)
      関白失脚(さだ まさし 作曲  村上 果 編曲)

  8. 合同演奏(指揮:白神 直之 ピアノ:大澤 宣晃)
    → フランスの詩による男声合唱曲集「月下の一群」(南 弘明 作曲)
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午前中はなんとかもった天気もついに午後から雨が降り出した。ただでさえお客さんの入りを心配していたが、この天気でさらに不安に・・・しかし、幕が上がった瞬間、大勢の人がそこに座っている姿を見てすこし気持ちが落ち着いた。

トップの「響」は、世間から一応“十八番”と言われている「合唱による風土記 阿波」を披露。かいつまんではよく演奏しているが、全曲演奏するのは久しぶり。曲によって全然表情がちがうので、通して演奏するとかなりの労力?を必要とする。指揮者のK氏も、この寒い真冬に汗だくで気合い十分の指揮!団員も結構ノッていたように思う・・・で、ノリが良すぎてリズムが崩壊しかける場面も!よく指揮者は冷静に立て直したと思う。メンバーも奇跡的にすばやく我に返って対応した。こういうところがむかしより「響」が成長した部分なのかも知れない。最初から少しヘビーな男声合唱ではあったが“文化立県とくしま”の意地?を示すことが出来たのではないかと、チョットひと安心。

2番目は高知県のTURKEY'S CULBさん。入れ替わりなので前半を聞くことはできなかったが、ここの団の声はとにかく明るい。男声合唱でよく陥りガチな「吠える」「いがる」という発声がないので、とても聴きやすい。この組曲は高知大学名誉教授の先生による作曲で、今回がなんと「初演」だそうだ!そんな記念すべき演奏を徳島で開催してくれるなんて主催者としては非常にうれしい限りである。ただ間際まで曲が完成しなかったせいもあってか、もう少し歌い込みができればさらによかったのに・・・と少し残念に思った。もしくは、意外にも指揮者N氏が全四国で“初振り”ということでなんらかの緊張感があったこともわずかに影響したのかも。

3番目は、えひめグリーによる「中原中也〜」。1曲目の「北の海」でのテナーソロのかたは、失礼ながら見た目はご年輩のように見えるが、とてもピッチが安定していて、加えて哀愁漂う美声で、それが中也の詩にマッチしているかんじでとても印象に残った。この組曲は自分が学生時代に指揮したことがあり、実際に多田武彦先生にご指導いただいた思い出深い曲である。個人的に終曲の「月の光」が好きで、今日久しぶりにしみじみと聴かせてもらえて本当にうれしかった。中也の気持ちの揺れ動きが、前半のピアノから後半のフォルテにつながっていく部分やクレッシェンド、ディクレッシェンドに投影されていると思うので、そのあたりがもう少しハッキリするとさらによかったかなと感じた。

4番目は、男声合唱団「我夢」(←GAMU)。前回の2007年全四国フェスを大成功におさめた主管団体である。ビール園での豪快な「打ち上げ」は今でもしっかりと記憶に残っている。さて演奏曲の「中勘助〜」は数ある多田武彦作品の中でも最もよく歌われている組曲である。とにかくソロが多いので、それを歌いきるだけのタレントが必要であるが、曲に応じたソリストの音色がよく合っていてよかったと思う。今回はベースが非常によかったので、曲全体がとても安定していたという印象を受けた。また常にこの団には高校生が入っているのが特徴だ。おじさんたちに揉まれながら男声合唱のいろはを学んでいる彼らはいつかこの全四国を引っ張っていく存在になることだろう。

5番目は、丸亀男声合唱団コールメル。全四国フェスが始まった当初から比べると必然的に高齢化されていくわけだが、それでも団員数が増えていっているというこの合唱団は素晴らしい。指揮者のK先生が来月めでたくご結婚されるという紹介からはじまり、「心の四季(男声版)」のとても和やかで優しい演奏が続いた。しかしこの高田三郎の合唱作品は、表に出てこない言葉や旋律にとても重みがある。それらを表現しきれるようになるには、やはり歳を重ねて円熟味を増さないと難しいのかも知れない。そういう意味においても、今回のこの合唱団の選曲は意味のある、相応しいものであったと感じた次第である。

6番目は、グリークラブ香川による「ジブリの森」。ともすれば偏りがちな男声合唱の演奏プログラムにおいて、こういうポピュラーな曲が出てくると会場の空気もホッと和む。またこういう曲は妙にパフォーマンスに走って合唱で聴かすことができないパターンが多いが、この合唱団はしっかりした音程とハーモニーで 「歌」をきちんと主張して観客を楽しませていたところに素晴らしさを感じた。指揮者のT氏は、指揮者の居場所にこだわらず、どんどんワープしていって合唱を身体で引っ張ってくる。ヨメさんは「今日の指揮者の中でカッコ良さNo.1だった」と言っていた。あと「もののけ姫」のカウンターテナーS氏のソロは、非常 に安定した音量とピッチで、観客のド肝を抜いていた。

7番目は、今回の招待合唱団である男声合唱団ARCHER(アルシェ)。今回おこしになれなかった吉村先生が長年指導をされた京都産業大学グリークラブのOB合唱団である。よって今回の演奏会に際し吉村先生のご体調や渡航計画などいろんな面からご尽力いただいたことを本当にありがたく思っている。彼らからすれば親分(←吉村先生)と同行できなかったことの残念ぶりは、僕らの比ではないであ ろう。それにもかかわらず、学生時代と変わらないハリのある声と音楽性豊かな表現力は、学生時代何度も“日本一”に輝いたその頃を彷彿とさせるものであった。また個人的には、関西では何度かおめにかかっている伊吹元子先生の引き込まれるようなピアノ伴奏をここ徳島で聴くことができたというよろこびも感じていた。「関白失脚」は客席では聴けなかったが、まさに結婚後十数年を経たであろう?アルシェの方々だからこそ歌える曲で、会場からはその真実味がかなりリアルに伝わっていたらしい。いろんな意味で・・・さすがだ。


そしていよいよ最後の合同演奏「月下の一群」。今回は楽譜のことから始まって、練習日程のこと、吉村先生のこと・・・いろんな障害が立ちはだかった。しかしピアニストの大澤宣晃先生だけは、早い時点で伴奏をお引き受けいただき、3度の練習もすべて徳島まで足を運んでくださった。大澤先生ご自身も大學時代から合唱に携わっておられ、いろんな曲にも詳しく「月下の一群は僕も好きだから、まかせといて」と快諾いただいた時の笑顔は、まさしく神の表情であったと。男声合唱においてピアノ伴奏曲で素晴らしい曲はたくさんある。しかし“男の哀愁”を惜しみなく表現できる曲といえば、私の知っている限りこの「月下の一群」以外に見あたらない。なぜ男の哀愁にこだわらないといけないのか?と訊かれる と、それは今自分が感じている男というものがまさにそういうものであるからだとしか言いようがない。逆に言えば、男声合唱でしか表現しえない曲だからということでもある。なんとか会場までその思いが伝わればいいと思った。指揮者とはいえ自分は全四国のメンバーだから、合同演奏においても、大澤先生とはもちろん、ステージ上のメンバー全員と極力目を合わせて演奏したかった。その気持ちが伝わったのか、演奏中は一人一人の視線をすごく熱く感じることができた。みんながいい表情で力の限りの表現をしてくれているのがとてもうれしかった。今回の演奏が音楽的にどうだったか?技術的にどうだったか?ということは全く問題にならないような、感動的な「月下の一群」だったと思う(まあ指揮者はもっと冷静でなければいけないのかも知れないが・・・)。演奏が終わって舞台袖に一度はけた時に大澤先生と握手、涙が出そうになったがまだすべて終わっていないので我慢!大澤先生も満足そうにされていたのでひと安心。

アンコール1曲目はアルシェK氏指揮による宴会バーション?の「斎太郎節」。ソロのアルシェI氏の声は想定外のダイナミックさで、曲の途中で拍手をする人もいたぐらい。2曲目は客席を演奏者が囲んでの「遙かな友に」。あとでメンバーから、客席で泣いている人をたくさんみかけたと聞いた。それがいいことかどうかはわからないが、客席の人たちとも気持ちを同じくできたことはうれしいことである。誰がよかったのでもなく、演奏側と客席側がいっしょに作り上げた演奏会であったことに違いない。

そして場所を変えての「打ち上げ」。各団の指揮者が代わるがわる挨拶にたち、そのたびに愛唱曲をみんなで熱唱♪みんなと演奏会をやり終えた充実感はあるが、この場所に吉村先生の姿がないのがやはり残念でだった。しかし今年9月にアルシェの演奏会が京都で行われる予定で、最後のステージに今日の全四国のメンバーに合同演奏としてステージに立ってほしいと主催者からうれしい依頼を受けた。よってその時までに吉村先生にはよくなっていただいて、9月にはできれば先生とともに舞台に立てれば、今回の無念も帳消しなる。。。まだまだ先まで続いていくようで、自分としてはまだ演奏会が終わっていないような気持ちも少し残っている、なんだか嬉しい。何はともあれ、吉村先生の1日も早いご回復を願いつつ、今回の演奏会に携わってくれたすべての人たちに感謝の気持ちでいっぱいである。この交流が末永く続きますように。

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−2009年2月27日更新−
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