[色者(しきしゃ)のぼやき] 第33回

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軽井沢合唱フェスティバル2008

日時:2008年8月8日(金)〜10日(日)          
場所:軽井沢大賀ホール(長野県北佐久郡軽井沢町)

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8月7日午後7時すぎ、仕事を終えてから家族とともに徳島を車で出発。途中、ヨメさんの実家(大阪府茨木市)・養老SA・阿智PAにて休憩をとりながら、翌日午前7時すぎ軽井沢に入る。早朝の涼しさも日差しが増すや否や、突然猛暑に!あわてて帽子を購入する。今夜宿泊するホテルにはもちろんまだチェックインできないので、車をとめて荷物を預けレンタサイクルでまわることにした。大賀ホール集合までの間、旧軽井沢界隈を散策。朝からやきたてのパンの香り誘われ、そのパン屋さんでモーニングをとる(テラスが併設されていて、そこで買ったパンを食べられるようになっている)。この店、かつてジョンレノンが軽井沢滞在中によくここのフランスパンを買いに来たらしく、壁のあちこちに写真が貼ってある。息子は知ってかしらずかフランスパンを注文してほおばっていたが、「うまいか?」ときくと「まあまあ」との返事。ビートルズってなに?という世代だから仕方ない。旧軽井沢はまだ午前9時すぎだというのにほとんどの店が開いている。さすがに慌しい日本人はこの時間帯から買い物に勤しんでいる感じだ。パン屋さんのすぐ前にある「軽井沢観光会館」は、トイレ使用料として1回100円かかる・・・ちょっと日本の国とは思えない(驚)。

<第1日(8日)>
午前11時に、歌姫のメンバーと大賀ホール前で合流。彼女らは東京経由の新幹線で軽井沢入りし、しっかりお昼ご飯として「峠の釜飯」をゲットしていた。ロビーは壁を極力排して、大きなガラスにてたくさんの自然光取り入れる工夫がされていた。それはロビーだけでなくホール内にも自然光が入ってくるようになっており、エコ時代の先端を行く素晴らしいホールであることを実感した。今日の1日目は、公募団体によるアンサンブルコンテストがあり、我々も四国のジョイントコンサートでいっしょに歌った仲間の有志で構成する「四国の愉快な仲間たち」で参加、自分も初めて大賀ホールの舞台を踏んだ。舞台に立った感覚は、ちょうど五角形の中央に自分がいるかんじで、「前」を意識するというより、「上&周囲」を意識するような歌いかたに自然と移行できたような気がした。日頃遠いところで別々に練習している四国のジョイント仲間が、わずかな時間できちんと気持ちを集中させることができたのは、やはり松下先生を囲んでのジョイントコンサートがお互いの信頼の絆を強くさせているからだろうと歌っていて非常に感じた。「四国の愉快な仲間たち」の演奏曲は「げんげ花(愛媛県民謡)」「猫の嫁入り(徳島県民謡)」「今、ここに(四国ジョイント委嘱作品)」の3曲。演奏が終わってからメンバーみんなの晴れ晴れとした表情がその達成感を物語っていた。このアンコンは出演者にも席を与えられ、そこで最後まで他のグループの演奏を聴けるようになっている。どの団体も演奏に一体感があり非常にレベルが高い。そんな演奏に対して客席そして他の団体からも大きな声援と手拍子なども入るので、雰囲気はさながら「コンテスト」というよりも「ノリノリの演奏会♪」というかんじでとっても楽しかった。このアンコンの審査結果は最終日に発表される・・・ということで、ひとまず会場を出て、その後同じコンテストに出ていた「Spiaggia Centrare」(東京)さんと意気投合し、夜の飲食(飲>食)を共にした。「響さん、あした本番なのに飲んで大丈夫なんですか?」と気遣っていただいたが、たくさん頂いてしまった・・・まあ私は色者(しきしゃ)なので、演奏自体には影響すくないでしょうからヨシとしよう(笑)。ホテルにもどるとしばしヨメさんと話しながら途中で僕が寝てしまったらしい。そういえば昨夜は夜中じゅう運転しててほとんど寝てなかったなぁ(爆)。

<第2日(9日)>
大賀ホールで朝イチ、橋本先生のヴォイストレーニングを受けた後、本日のメインイベントである「合唱フェスティバル」に出演予定の招待合唱団が、練習のため、新軽井沢会館に集合した。5つの合唱団がそれぞれに練習場所を与えてもらい練習に勤しんだ。「響」の練習場所は会館1階の出入り口ヨコの部屋・・・エアコンがなかったので窓全開!!会館を出入りする人たちはもちろん、道を歩いている人たちまでが振り返る「気迫の(ご近所迷惑な)練習♪」を2時間ほどおこなった。舞台リハーサルは15分間という短い時間で、「八木節」の“位置取り”やピアニストの入りかたなどを確認するにとどまった。もう少し歌っておきたかったが・・・仕方がない。チョット不安をかかえたまま舞台を後にする。

夕方からの「合唱フェスティバル」の前に、ラウンジホールで“松下男塾 男声合唱の楽しみ”という講座があり、響からも私を含め16人のメンバーが参加した。全体で40人という募集人数だったが、それによりたくさんの男性が受講し、加えて20人ぐらいの女性が見学していた。使用楽曲は「柳河」「そのひとがうたうとき」の2曲。中でも「柳河」は男声合唱曲の定番中の定番で、これまでそんな歌い方に注意点を払いながら歌ったことは失礼ながらあまりなかったのであるが(というより学生の時、先輩が歌っているのをよこでききながらおぼえた?)、今回の松下先生の深い解釈の仕方、そこから来る必然的な音楽表現・・・私は本当にこれまで無意識のうちに歌っていた自分が情けなくなった。指揮者として、どう歌と向き合い表現していけばいいのかをもっと真剣にとらえないといけないと・・・感性を研ぎ澄ましながら、表現方法のスキルアップも欠かせないと感じた。

午後3時から大賀ホールにて“合唱フェスティバル”が行われた♪ 今年で4回目となるこのイベントにおいて、この客席が満席になったのは初めてだとのこと。これから繰り広げられる合唱の祭典を目前にして、会場の熱気というものをすごく感じた・・・司会は松下先生自身がつとめられ、軽快なトークで会場をこれでもかと言わんばかりに盛り上げていた。ちなみにこの演奏会は、出演者も客席を確保してくれていて、客席から入れ替わり舞台に登場するというシステムで、すべての演奏を落ち着いて楽しむことができた。

トップバッターは淀川混声合唱団(大阪)さん・・・日本ではまだまだなじみがうすいような世界のいろんな曲をレパートリーとして持ち、それをサラッとかっこよく歌いあげ、なおかつ邦人作品もしっとりと表現できるのがこの合唱団の持ち味だといつも思っている。なにより歌っている時の合唱団の表情が抜群にいい!指揮者の伊東さんが真剣に指揮されているのに、どうしてみんなの表情はあんな に柔らかいのだろう(微笑)。ちなみに伊東さんのMCは今回もシュールでかっこよかった!・・・なのに客席はなぜか大爆笑だった。

続いてChor June(東京)さん・・・エレガントな白のドレスに身を包んだ美女揃いの女声合唱団。西日本に住んでいるとちょっとおめにかかれないようなセレブな雰囲気いっぱいである。しかしながら演奏曲は非常にシリアスで、最初の「涙の歌」は、息もできないような張りつめた空気が長時間漂った。指揮者の甲田先生自身の作曲であり、その気合いがひしひしと伝わってきた。1曲の演奏時 間が長かったので、全体で4曲しか聴くことができなかったが、もっといろんなレパートリーをお持ちみたいだったので、もう少したくさんの曲をききたかったと感じた。

3番目はいよいよ「響」の出番・・・各団体30分の演奏時間に加え、開演前から席についていたので、約1時間半ほどず〜っと座っていたことになる。早々とエコノミー症候群の兆候が現れ?、足・腰・肩などを揉み解しながらステージへ! 客席からは“上手い演奏は君らには期待していない!なにかやって楽しませてくれ!!”と言わんばかりのリクエスト・オーラが漂っていた。やはりこのプログラムにしてよかったかな♪と、演奏直前に少し思った。まず最初2曲は「阿波」より「たいしめ」と「たたら」・・・徳島の労働唄さながらに気合いとこぶし十分に歌った。「阿波」に関してはわれわれの“十八番”的な曲になりつつあるが、それでも演奏するたびにいろんな発見がある不思議な歌である。3団体目ということで少々眠くなってきた客席は、いきなり爆発的な地元民謡を浴びせられ、目が覚めたのではなかったか?メンバーにとってもいい発声練習になったはずである。続いて演奏した「Aura Lee」はロマンチックに歌い上げるつもりが、民謡の雰囲気を引きずって少々粗っぽくなった感じ。デゥオパの「Agnus Dei」は、若手ソリスト3人が少し大舞台で遠慮気味だったが、きれいなハーモニーを披露してくれた。最後のppをピーンと張りつめて歌いたかったのであるがみんな多少ヘロヘロだったのが残念だ。そしてアカペラ最後の曲として「八木節」を披露・・・演奏直後に松下先生から“あそこまでやるか!”と苦笑させたパフォーマンスで舞台と客席との一体感を醸し出せたのはよかった。いかんせん曲の完成度は未熟なまんまだったが・・・作曲者を目の前にして失礼極まりない話しではあるが(謝)。あとの2曲はピアニストの大澤宣晃先生とのコラボということで、色者としては彼に任せっきりの、完全リラックス状態♪で楽しいひとときであった。彼のピアノの特徴は、合唱との協調感がとてもいいことにある。彼のピアノは明らかに“歌って”いて、合唱の後ろにまわってサポートすることもあれば、グイグイ前にたって合唱引っ張っていくこともある。つまりは「男声五部合唱」と言っても過言ではない。そんな彼のピアノで、シリアスな「秋の歌(月下の一群)」と、ポップな「言葉にすれば」を共演し、響はまたひとつ新たな感性を吸収できたのではないかと思う。最後にリクエスト曲を演奏し終わった瞬間、客席がステンディングオベージョンで応えてくれた。これまで長い自分の合唱の舞台でこんなことは初めてだったので、どうこちらも反応していいのかわからず戸惑ってしまったが、とりあえず感謝の気持ちを示そうと何度も礼をしたことしかおぼえていない。これからまた合唱の舞台は数多くあるだろうが、今宵のステージは自分にとっては一生のうちでもとても大切な思い出深いステージになったことは間違いない。

休憩をはさんで「信州大学混声合唱団」(長野)さんの演奏があった・・・大学合唱団が徐々に衰退していると言われているこのご時世で、団員100人近くの大きな合唱団!素晴らしいとしか言いようがない。しかも大人数でありながらまとまりがあり、声も素直で聴いていてとても心地よいのが印象的だった。指揮者の中村雅夫先生はとてもとてもパワフルで、その指揮ぶりからも日ごろの指導ぶりが容易に想像できる・・・この先生についてて下手になるわけがない!!2人の学生指揮者も登場、緊張していたのかかたさが少々目立ったが、最後まで大合唱をコントロールし、集中力を切らさなかったのは見事だった。欲を言えば、もうすこし曲によって歌い方、表現の仕方をもっと変えることができれば、さらに演奏の幅が広がっていいと感じた。

招待合唱団のトリは「NHK福岡児童合唱団 MIRAI」・・・正直、自分はこのステージの時が一番テンション高かったように思う(←たぶん自分たちより。出番前はとても平常心ではいられなかったし、演奏後もしばらくは興奮覚めあらぬ状態だったため)。プログラムは童謡やわらべうたを中心に児童合唱らしい誰もが笑顔できける曲、それを元気いっぱい、幸せいっぱいの表情で子供たちに歌 い上げられると、まるでポエムの世界に誘い込まれたような気持ちにさせられる。作為的なことがいっさい感じられない彼らの演奏に胸をうたれ、客席はいっせいにスタンディングオベージョンで応えた。指揮者の大庭先生はもちろん児童のみんなも泣いている。それをみてこちらまでが泣かされる・・・そんなとても温かいステージだった。

休憩をはさんで、お待ちかねの“耕友会コンサート”がはじまった。松下先生の指導されている合唱団が次々に登場、各合唱団の演奏時間が短かったのは残念だが、それぞれに繊細かつ優雅で、時におしゃれでユーモア溢れる合唱を聴かせてくれた。松下先生はここでも全団体を指揮、それまで司会進行もやっていたわけだからまさに大車輪の活躍ぶり。同世代の人間からみて本当に身体にご自愛いただきたいと思うばかりである。最後に耕友会の全体合唱があり、オルバーン作曲の「Mettimi(あなたの心に私を刻みつけてください)」を世界初演として披露。鳥肌が立つというよりも、身体の中に音が入ってくるようなこれまで感じたことのないような衝撃を受けた。この合唱団の視野は確実に“世界”であることを実感し、そしてそんな世界レベルの合唱をこんな近くで目の当たりにできたことをとても幸せに思った。

午後3時から始まった“合唱フェスティバル&耕友会コンサート”は終わってみれば午後8時をすぎていた。こんな5時間をこえるようなコンサートではあったが全くと言っていいほど退屈することはなかった。これは自分たちがプレイヤーである時もオーディエンスである時も、全く同じような感覚でいられたからではないだろうか。舞台にいる人たちにもいつも最大の声援と拍手で迎え、それにまた演奏者が応える・・・アンサンブルコンテストにもあったこのスタイルが演奏会でも存分に発揮され、さながらホール一体となった素晴らしい演奏会♪・・・立ち上がった時チョット腰が痛かったが、ホールをあとにする人たちがみんな笑顔だったのがこのフェスティバルの象徴であろうと思った。

お楽しみはまだまだ続いて「交流会」に突入!・・・最初は合唱団ごとに集まっていたが、その牙城はすぐにくずれ、学生同士または社会人同士いろんなところで交流が深まったようである。各合唱団で1曲ずつの持ち歌を披露する時間があり、響も中島みゆきの「時代」(松下 耕編曲)を歌い、雰囲気作りに一役担った。その後は伊東恵司氏の指揮、響の枝川浩二氏のソロで「柳河」を歌うなど、交流会は歌いまくりの様相を呈していた。個人的には、耕友会に所属する徳島県出身のY君と出会い、また先ほどの「時代」を直接松下先生に編曲依頼したというその本人である、同じく耕友会のM君と出会いお話しできたことなどが、うれしいハプニングであった。その後「二次会」にも突入し、解散になったの時は日付が変わっていた。ホテルにかえるとさすがに今日は家族全員眠っていた。

<第3日(10日)>
今日は、これまでほったらかしにしていた家族に付き添って行動した。1日目は軽井沢アウトレットモール、2日目は浅間山鬼押し出し観光にバスで出かけていたうちの家族・・・僕の知らない間にいろんなところを散策していたようだ。僕もヨメさんもあしたから普通に仕事が待っているので、どうしても今日中に徳島に帰らなくてはいけなかった。朝一番、後ろ髪ひかれる思いで、軽井沢をあとに する。午前中の「発声レッスン」の講座にはうちの団員数名が、また「合唱の中のピアノ」には大澤先生がモデル受講生として参加したはずである・・・どうだったのかな?大澤先生は毎年この講座を受講されているレギュラー的存在だ。それだけの魅力がこの講座にはあるのだろう。うちの団員も発声レッスン受けて一皮も二皮もむけていることを期待したい♪ そんなことあんなことを思っているうちに、マネージャーから「四国の愉快な仲間たち」が初日のアンサンブルコンテストで1位になった!という知らせが届き、びっくり仰天した。本番直前まであーでもないこーでもないと悩みまどい、その結果舞台に出て開き直れた部分があったことはたしかであるが・・・それにやっぱり四国の団結力かな、そう思うと心の底からうれしさがこみ上げてきた。四国のリーダー的存在である歌姫のM先生には、心から「おめでとう&ありがとう」と言いたい。

最終日の様子は残念ながらよくわからないが、クロージングはとても感動的なものではなかったかと推測される。今回は招待合唱団として参加したため、すべての講座に参加する時間がなかったことが唯一残念でならない。次回参加する時ははたくさんの講座を受講し、またあのコンサートの中に入って感動と興奮を客席から味わいたい。今回このような貴重な経験を積ませてもらったことを、お誘いいただいた松下先生、ならびにきめ細かなサポートをしていただいた耕友会のみなさんには感謝の気持ちでいっぱいである。

渋滞が予想されながら意外とスムーズに帰ってこれてひと安心。なんだか軽井沢での週末がもはや夢のように感じられるが、買い込んだたくさんのおみやげに優るとも劣らない量の「しあわせ」を、徳島に持ち帰ったことに間違いはない。また明日から元気に仕事にもどれそうな気がする。


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−2008年8月16日更新−
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